遊星歯車のダイナミクス(ダイナミクスの取り扱い)
前回は遊星歯車の力学としてスタティクスを考えました。
この講座ではモノの動きに対する興味、
つまりダイナミクスを取り扱います。
ちょっとMATLAB/Simulinkの世界からずれてしまいます。
運動方程式の導出方法
遊星歯車のダイナミクスの取り扱いに関しては
・高校の物理の拡張(ニュートン?)
・ダランベールの原理(?:電気でいうキルヒホッフ?)
・ラグランジュの運動方程式(エネルギ法)
この3つの手法で運動方程式を導出できます。
当たり前だが、どの方法でも結局導き出される運動方程式は同じ。
慣れると一番システマティックで間違いの少ない方法は
ラグランジュかなと思います。
また、遊星歯車の運動方程式をラグランジュの運動方程式使った
導出方法は最近だと結構ネットで検索すると出てきます。
ということで、いまさらラグランジュの方法使った導出方法
示してもつまらないので2番目のダランベール使った導出方法示しますね。
まず、遊星歯車の基本公式は前回示しましたが、
これをダランベールのアイデア使って拡張します。
ちなみに、ここでいうダランベールの原理は厳密にいえば異なります。
単に運動を示すのに静つり合いの式を織り交ぜて使えるという意味で
ダランベールと言ってますのでご注意くださいね。
もう一度、静つり合いの式を記述します。
回転数関係:[latex]N_R-N_S=\lambda(N_C-N_S)[/latex]
トルク関係:[latex]T_R+T_C+T_S=0[/latex]
エネルギ関係:[latex]N_RT_R+N_CT_C+N_ST_S=0[/latex]
(参考:ATの変速機構及び制御入門、著:守本佳朗、グランプリ出版)
遊星歯車のダイナミクス
遊星歯車のダイナミクスを要素ごとに考えると下記の通りになります。
[latex]I_R\dot{\omega_R}=T_{iR}+T_R[/latex]
[latex]I_S \dot{\omega_S}=T_{iS}+T_S[/latex]
[latex]I_C \dot{\omega_C}=T_{iC}+T_C[/latex]
これら各要素の運動方程式に静つり合いの式合わせて6本の式を
連立して解けば、遊星歯車のリングギヤ、サンギヤ、キャリア
各要素の動きを示すことができます。
結局のところ
ここでやったのは遊星歯車の三要素の独立した式を追加しただけです。
追加した3本の式は運動を示し、前回は静的なつり合いの式を示したわけです。
静的なつり合いの式は拘束条件(?)という言い方が都合良いかもしれません。
要素の運動を後々、静的なつり合い方程式と組み合わせて解くから
ダランベールと勝手に言ってます。
もしかすると電気回路でいえば、キルヒホッフの法則とか鳳-テブナンの定理
って言った方がイメージしやすいかもしれません。
次回は
次回の遊星歯車のダイナミクス講座ですが、
前回と今回で導出した6本の式から遊星歯車の運動方程式を導出します。